堺市は2008年度にはじまった内閣府の環境モデル都市に手を挙げ、翌2009年度に認定されました。環境モデル都市とは低炭素社会の実現に向けて温室効果ガスの大幅削減などへの取り組みを行う市を国が選定したものです。現在13都市が認定されていますが、ネットで一昨年視察した水俣市は2008年度、昨年視察した飯田市は2009年度認定されています。
堺市は臨海部コンビナートを抱える地域であり、温室効果ガス排出量は産業部門が64%を占めているます。そのため、削減目標も国の基準をそのままあてはめるのは難しいと、目標値を2020年度までは新設コンビナート稼働により1990年比で+1%増加(国は1990年比−25%)、その後は民間企業のエネルギー対策や産業構造の変化などにより大きく減少し2050年度−62%(国−80%)を見込んでいます。市の担当者も国の一律削減目標を達成するのは地域性もあり難しいと言っていました。また数値の考え方も微妙で、たとえば原子力発電所が多い関西電力の場合、温室効果ガス排出量だけを考えると、再生可能エネルギーに変換する効果はそれほど大きくはなく、数値目標への貢献度は低くなります。環境政策は単純に数値だけではとらえられないということです。
堺は歴史的にも商人の街として発展したように、新しい動きを民主導で進める気風があり、市の行動計画にもその地域特徴が反映されています。内容は大きく3分野に分かれています。
①産業分野を中心とした省エネルギー
②公共交通・自転車の利用促進
③市民のライフスタイル見直し、人材の育成
ここでは民の地域特性が生かされている自転車による省エネを紹介します。これは昨年度国の全額補助(1億8500万円)で進められたもので、レンタル自転車450台を4か所の駅ポイントに設置し、どのポイントにも返却可能として公共交通の利用促進を図るものです。これまでのレンタサイクルが同じ場所に返却しなければいけない不便さを改善しようというものですが、今年度9月からスタート予定で実際を見ることはできませんでした。堺市がレンタサイクルを計画に入れた背景には、地場産業に有名な自転車メーカー(シマノ)があり、以前から自転車のまちを標榜していることもあります。さすが商人の町、一挙両得というか、環境政策にも経済効果をどのように生み出すかということでしょうか。
今年度府中市も新たな温暖化対策の行動計画を策定する予定ですが、目標数値の考え方や、地域性をどのように反映させられるかなど、十分な検討が必要でしょう。