もうひとつ、役場の面白さは「ゴジカラ村株式会社」であることです。なぜ、株式会社なのかは、村にある古民家を移築する費用を銀行から借りるのに、それまでの社会福祉法人の理事会で同意が得られず、それなら株式会社を作ってしまおう、ということだったそうです。自分たちの必要に合わせた運営形態を選び分化していく、これは次に行った「わっぱの会」でも感じたことで、
方向の一体性と分化することによる多様性は、大きな強みではないかと思いました。
今回の視察の大きな目的として、高齢者の多様な住まいの在り方見学がありますが、村の中には50戸のケアハウスがあります。そこの食堂には名古屋でも有名なフグ料理店が入っていて、訪ねてきた家族や友人と食事をする楽しみを演出しています。
このような演出は村の随所にみられ、それは理事長の吉田さんの村づくりのストーリーに沿ったものだ、という説明がありました。施設を作るのではなく、まず暮らしのストーリーを描く、それに合わせ建物は造られ、木は残されています。
そのストーリーの楽しさは次にいた小規模特養「だいたい村」の入り口にある大きな窓のある8畳ほどの小屋でも発揮されていました。そこは若い人に貸して、トイレがないので特養に使いに行き、高齢者の人が出入りするときに大きな窓ごしにあいさつを交わしたりする、というストーリーに沿って作られたのだそうですが、残念ながら未だ住人になろうという人は現れないそうです。あの大きな窓ごしの視線は厳しいかもしれませんね。
最後のほどほど横丁も多世代の共同長屋で、面白いのは若い女性には家賃が安くなっていることです。きっと高齢者だけの施設とは違う暮らしの楽しさや、ちょっとしたごたごたもありながらの日常があるのだろうな、と思いました。
ゴジカラ村のちょっと懐かしい昔を思わせるストーリーがあり、みんなが仕事をしているというよりもそのストーリーの中の住人として村にいる、だからみんな仕事が終わった五時からのような楽しい顔をしている、というのが「ゴジカラ村」の名前の種明かしのようです。