正井さんたちが地震後に開いた相談にもさまざまな被害や相談が寄せられていたものの、公的機関や警察は一切そのことを認めようとはしませんでした。その実態は耳を疑うような話ですが、たとえば4000人以上が収容されていた学校の体育館では、通路側に寝ていた子どもや女性たちがいたずらされたり、自宅のトイレに帰った女性がレイプにあったなど、今でもその心的後遺症に悩む女性は多くいるそうです。
震災の翌年、正井さんたちは沖縄の米兵による少女レイプ事件をきっかけに「神戸・沖縄女たちのおもいをつなぐ」会を開催、その中で震災時の被災地や避難所・仮設住宅で女性や子どもたちが受けた性被害について報告し、避難所での対策の必要性を訴えました。しかし、そのことで正井さんは一部報道機関などからバッシングを受け、傷つき、震災での話を10年近く話さなくなりました。
しかし、2005年スマトラ沖地震で同じような性被害にあったスリランカの女性たちが、国連の場で実情を訴えたとの記事に、災害時にはどこででも同じようなことが起こりえるのだ、との確信をもって、その年の11月「災害と女性」についてのフォーラムを開きました。
そのまとめである防災フォーラム「災害と女性」アピール文では
・防災や復興の諸事業には責任者として女性を登用する
・救援復興にかかわる担当者にはジェンダートレーニングを行う
・被災女性の総合相談窓口開設
・避難所での女性、乳幼児を抱える人への配慮や相談窓口設置
・職を失わないように災害特別を男女共に取れるようにする
・その他マイノリティー女性のニーズに応じた支援を行う
など、参加者の声をまとめています。
正井さんは、東京の人たちにこそ自分たちが経験し、そこから見えてきた課題や対策を伝えたい、と言います。
「ひとつの空間(体育館)に3,000〜4,000人が入ると責任者はとても把握できなくなる、2,000人が限界、防災計画ではどうなっていますか?トイレは安全なところに、男女は分けられていますか?避難所に女性の責任者がいますか?日ごろからの行政施策にはジェンダーの視点がありますか?」と問いかけられました。
今回の学習会から、女性たちの声を集めての具体的な災害対策の必要性と、行政の日常的な女性施策の推進が必要だと実感しました。正井さん、ありがとうございました。
*正井さんの本
「女たちが語る阪神大震災」〜いいたいことがいっぱいあった〜
「災害と女性」資料集
「被災地における性暴力」全米性暴力情報センター発行・翻訳