国立医薬品食品衛生研究所の安全性について

あらたな公害?バイオ施設とは

 府中市は6月末、市の東部地区に残る国管理の府中基地跡地約13.9haの利用計画最終案を国に提出しました。
南側5.5haは市が公園とし、真ん中5.5haは現在世田谷区用賀にある国立医薬品食品衛生研究所が移転、北側2.9haは民間住宅地というものです。

今後、この案に添った動きが出てくるのでしょうが、国立医薬品食品衛生研究所(衛生研)の施設としての安全性については、市民の中からは不安の声も聞かれます。そこで6月議会では衛生研の安全性について、市がどのように考えているのかを質問しました。

衛生研は名前の通り食中毒菌や新薬試験のための細菌やウイルスなどを扱うバイオ施設です。近年、鳥インフルエンザやSARZなど新たな病原菌の出現への対応、科学技術の発展により遺伝子組み換えを行うこのようなバイオ施設が世界的に増えていますが、日本ではWHO(世界保健機構)の勧告にもかかわらず、いまだバイオ施設の安全性を確保するための法令が作られていない現状があります。

そのため、日本では住宅地の中にバイオ施設が作られたり、実験内容も公表されない、事故がおきた時の報告義務もないなど、全く野放しの状態です。これまでの衛生研の説明では「安全は心配ない」と言っていますが、何を基準にして「安全」と言っているのか、細菌やウイルスなど目に見えないものだけに、府中市民としては不安が残ります。

質問内容は是非6月議会の議事録が公開されていますので、そちらでご覧頂きたいのですが、市も答弁の中で市民の安心安全を最優先する、それが確保できないのであれば衛生研移転は受けられない、といっています。しかし、その時の安全への基準をどこに置くかが大きな問題です。

他の自治体をみると、大阪の吹田市は同じようなバイオ施設が市内に建設されるに当たり、国に法令が無いのであれば自治体で作るしかないと独自条例で施設への立ち入り権などを盛り込んでいます。その他、千葉市や茨木市は安全確保の協定を結ぶなど自治体が独自の基準を示しています。
今後への対応としては市が衛生研に対して充分な情報の開示と説明を求め、市民の側に立った安全基準を示すことが必要でしょう。

私は今回の質問の最後に、4月の視察で行った水俣市の吉井元市長の言葉を引用しました。「水俣病について市には法的責任は無かったが、市民の苦しみや不安を放置した道義的責任があった。」という言葉です。今回の衛生研についても、野口府中市長は府中市民に対する道義的責任を果たして欲しいものです。また、議会の中でも条例制定や協定書の内容についても議論していきたいと思います。

また、バイオ施設建設問題は各地でおきており、現在鎌倉ネットでも武田薬品の研究所建設問題にとりくんでいます。