周産期医療の課題

長野県こども病院の視察から

周産期とは妊娠22週から生後7日までの期間を指す言葉で、周産期医療というと、母体と新生児両方の医療を指します。
周産期は母体・胎児にとって、常に万が一の危険を伴う時期であり、身近な地域での医療機関への受診は欠かせませんが、府中市内でも一時お産を出来る病院が無くなってしまうのではないか、と心配されたことがありました。
地域の産院が閉鎖してしまう一因として、一人の医師だけではとても緊急性の高い状況に対応できない、何かあったときに責任を問われることへの回避があるようです。
一方、近年多胎児・母体の痩身・高齢出産などにより、超低体重児・仮死状態の出産が増える傾向にあり、生まれた時に1%は積極的な心肺蘇生が必要だとも言われています。
そのため、地域の医療機関をサポートする高度な周産期医療体制が今求められています。
現在、市内武蔵台に、都内で唯一の都立小児総合医療センターの建設が進められており、総合周産期医療機能をもつことになっています。では、どうしたらその高度医療機能が生かされるのか、同じく県内の高度周産期医療を担う長野県こども病院に視察を行いました。

説明してくれた広間医師の話では、高度医療機関の課題は、NICU(新生児集中治療室)が常に満床に近いことだそうです。空きがないと緊急の母体搬送受け入れも難しくなります。
ですから、いかにしてNICUから先の流れを作るか、そのためにはこどもたちが戻っていく地域の医療機関とのネットワーク、具体的に顔の見える関係性が出来ているかどうかが大きな課題だと話してくれました。
そのためにこども病院では月1回は地域に出向き、医療関係者
に新生児蘇生法などレベルアップの講習を行っています。そのことで地域の医療機関とこども病院の関係性もでき、子どもたちが地域に戻っていく時の連携も容易になるといいます。
広間医師は、長野県の医療の特性を「いい意味での閉鎖性と顔の見える人間関係」と言っていました。
では東京は、と見ると全くその対極にあります。
新しい小児総合医療センターを機能させるためには、いかに地域の医療機関との連携体制、人間関係を作れるかにかかっているようです。