環境先進国ドイツのお話

 信じられないこの冬の暖かさに、それでも気持ちのどこかでは、(こんなはずは無い、きっと明日は寒くなる)と思っているうちに立春も過ぎてしまいました。
「地球温暖化」という言葉がいよいよ真実味をおびてきました。

先日、府中にお住いのSさんから、昨年訪問した環境先進国ドイツのお話を聞く機会がありました。
Sさんは多摩市に持っていた里山を、相続が発生した時に市に寄付し、多摩市の市民の皆さんと月2回、里山保全の活動をしている方です。昨年、多摩市で環境活動をしている市民団体の企画で、環境先進国ドイツへの視察ツアーに参加し、ドイツの環境への取り組みが形だけではないと実感したそうです。

 訪問先の一つであるカールスルーエ市(人口28万人)では河川・樹木の里親制度があり、子どもたちを中心とした市民、市公園局のとの協働作業でビオトープなどの管理が行われているそうです。
樹木の里親は下草の管理や水やりや、何かあったら市の公園局に伝えるのも大切な仕事です。誰でも登録できて、簡単な審査のあと市長から認定されます。
河川の里親は釣り愛好会や小中高校の生徒、自然クラブや個人の有志などです。川を幾つかの区画で分け管理します。里親は川岸の侵食状況や川床の深さ、植生や景観など、河川の変化を観察し、役所の担当者に情報を提供します。その情報をもとに河川環境を改善する提案にも参画しています。
 
 里親制度は日本でも広がり始め、市民と行政の協働事業としてはすすめやすそうです。但し、ドイツでは国の自然保護法で「自然保護および景域保全の目的と原則」があり、それに基づき州・地域・市町村が景域計画を作ります。景域計画は野生動物の分布地図をベースに、地形・水域・気象・レクレーションなどの要素を重ね合わせて作られ、その内容も景域計画に詳細に示されています。
だからこそ、市民も里親としての役割を景域計画の中で読み取ることができ、より積極的な関りを持つことが出来るのではないでしょうか。

 そう思うと、いつも場当たり的に出されてくる私たちの市の公園計画や緑道などに、市民を引き寄せる力がないのも当然かもしれません。改めて環境政策の基本概念をしっかり持つことの大切さを実感しました。

Sさんのお話は他にも「森の保育園」や「過疎の町を森に返して活性化を図る」「市民意見を議論する市民協議会」など興味深いものばかりでした。ドイツだから出来る、とあきらめずに府中でも実現したいものです。