11月のホームページ更新がすっかり遅くなってしまいました。
10月は3週連続で視察があり、話題はたくさんあったのですが、その為かちょっと後半は疲れ気味でした。
今回はその中で、滋賀・大阪の障害者作業所の視察報告をします。
先月、障害者自立支援法が国会を通過しました。そこで大きな問題とされているのが、サービスへの利用料負担が現在は所得に応じての「応能負担」であるものが、受けたサービス量に応じて払う「応益負担」になったことです。それには、障害者の地域生活の保障のひとつとしての就労の保障と、それによる所得保障があってこそですが、現実には障害者の皆さんの就労の場は少なく、あっても就労所得額はきわめて低く、障害者手当てだけでは必要なサービスさえ受けられなくなるのではないのが現状です。
そんな中、滋賀県が今年障害者の就労所得保障を目指す「社会的事業所制度」をスタートさせたということで、話を聞きに行ってきました。
現在の福祉的作業所では、障害者の方はその作業所の利用者であり、作業をしても賃金は月に1万円程度しかもらえません。作業所には障害者の数に応じての補助金や施設維持費が国や自治体から補助されていますが、障害者のみなさんの賃金などにはまわせないことになっているからです。そのこともあって、作業所は労働の場というよりは、福祉的居場所の要素が大きくなっています。
しかし、滋賀県のいくつかの作業所は、20年以上前からそのような作業所のあり方に疑問を持ち、障害があってもなくても共に働く仲間として、同一賃金を目指した活動を続けてきました。そのために行ったことは「稼ぐ」ことです。中には福祉的補助金さえもらわずにやってきたところもありましたが、既存の福祉的補助金をもらいながらやっていくところでは、障害者の賃金は補助対象とならない補助金を、事業収入があるとはいえ、障害者の賃金にもまわすことには気持ちの悪いものがあったそうです。
そこで、10年ほど前から行政と作業所のお金の使い方や事業のあり方について話し合いを始めました。国・県としても今後の作業所のあり方については、財源の問題からも模索を始めたところだったようで、昨年の滋賀県障害者施策検討委員会での議論を経て、今回の「社会的事業所制度」となったとのことです。
この制度は福祉と労働のミックス型で、福祉的補助金も出ますが事業所としての事業努力をすること、障害の有無に関係なくすべてと雇用契約を結び、最低賃金の保証をすることが義務付けられています。このような事業所が増えていくことで、わたしたちの中にある作業所や、障害者雇用の概念が180度転換するのではないか、という予感がしました。
制度的なことや大津・大阪の作業所について興味のある方は滋賀県のホームページやNPO共同連で検索してください。制度検討の動きは札幌や静岡でも始まっているそうです。